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新規顧客開拓を成功に繋げるポイント/なぜ、中小企業は新規開拓がうまく行かないのか?

多くの中小企業にとって、売上・収益向上のため新規顧客開拓を実践し、成果に結び付けることは、重要なテーマの1つです。しかし、新規顧客開拓をいざやってみたものの、成果が思ったように出ず途中で断念してしまった中小企業の経営者や営業パーソンも多いのではないでしょうか。
この記事では、中小企業の営業・新規顧客開拓支援を専門とするコンサルタントが、中小企業の新規顧客開拓がうまく行かない理由や新規顧客開拓を成果に結び付けるポイントについてお伝えします。

1.新規顧客開拓の必要性

そもそも新規顧客開拓はなぜ必要なのでしょうか?ここでは2つの視点から新規顧客開拓の必要性をお伝えします。

①持続可能な事業成長を実現するため

我が国の人口減少などの影響により、ほとんどの市場・分野において規模の縮小傾向が続く見込みのため、また昨今の物価高騰の影響などから、普段通りの営業活動を行っているだけでは売上・収益は必ず減少していきます。
普段の営業活動に加え、新規顧客開拓も確実に行うことで、持続可能な売上成長につながります。

②不測の事態の業績低迷リスクを避けるため

新規顧客開拓のもう1つの理由は、不測の事態に対処するためです。現在は既存顧客と安定した取引を継続できていたとしても、競合他社の出現や既存顧客の業績低迷などにより、契約がこの先も継続できるとは限りません。
小規模・中小企業には、売上の大半を1社~数社が占める売上既存体質の企業も多く、その場合は顧客喪失リスクも高くなります。業績が安定しているうちに新規開拓に取り組むことが必要です。

2.新規顧客開拓手法の種類

代表的な新規顧客開拓手法について「リアル営業」「Webマーケティング」の2つに分けて紹介します。

リアル営業

テレアポ

ターゲット顧客に向けた電話営業のことです。テレアポ=「売り込み」「つらい」などのイメージが強く、心理的なハードルは高いですが、ターゲット顧客が明確であれば有効な手法です。

②展示会出展

来場している意欲の高い見込み客に、商品・サービスや出展サンプルを直接見せながら案内できるため、効果の高い新規顧客開拓手法の一つです。成果は事前準備で70%決まると言われているため、いかにスケジュール通りに事前準備を進められるかが成功のポイントです。

③ビジネス交流会への参加

商工会議所などの公的機関が主催する交流会や民間企業が主催する交流会、中小企業家同友会や倫理法人会のような会員制の定期開催の交流会などがあり、種類は様々です。共通で言えることは、基本的には“売りたい人” が集まるため、成果に結びつけるためには創意工夫と中長期的な視点が必要です。

④商談会への参加

商談会は商工会議所や市区町村、振興公社などの公的機関や地方銀行などの金融機関が主催のものが多くあります。参加形態には、受注側、発注側、受発注側の3パターンがあります。大手企業のバイヤーなどが参加する商談会もあるため、接点を持つには有効な手段と言えます。商談会は全国各地で開催されていますが、大々的にPR をしていないケースがほとんどのため、自ら率先して開催情報を収集する必要があります。

⑤DMの送付

DMとは企業から特定のターゲットに送られるハガキ・封書などの印刷物や電子メールのことを指します。DMの種類には大きく分けて郵送・電子メール・FAX の3種類があります。顧客リストの作成やDM配信などのWEB サービスの普及により、以前に比べ小規模・中小企業でも、格段に取り組みやすくなっています。

Webマーケティング(ネット活用)

①コンテンツSEO

コンテンツSEOとは、自社サイト上で定期的に記事を投稿することで、 GoogleやYahoo! などの検索エンジンで、広告ではなく「自然検索(オーガニックサーチ)」で上位表示を狙う手法のことを指します。リスティング広告は短期的に成果を狙いますが、コンテンツSEO対策は成果に結び付くのに時間がかかるため、中長期的な取り組みが必要です。

②リスティング広告

リスティング広告とは、Google やYahoo! などの検索エンジンで上位に表示させる広告のことを指します。広告をクリックする毎に課金される(PPC(Pay per Click))ため、予算をコントロールでき、ローリスクで無理なく開始できるのが特徴です。

③メルマガ配信

メルマガ(メールマガジン)とは、既存顧客や会員に対して定期的に配信するメールです。特にある程度の顧客数(会員数)がある場合に効果を発揮します。

④自社サイトの整備

テレアポ、展示会、Webマーケティングなどの開拓手法を実施しても、サービスに興味を持った見込み客は必ずWebサイトを閲覧するため、(※自社サイトの整備自体は新規顧客開拓手法ではありませんが、新規顧客開拓の重要な要素であるため記載しています。)

3.新規顧客開拓がうまく行かない理由

必要性が非常に高い新規顧客開拓ですが、多くの小規模・中小企業で成果に結び付けられてないのが実情です。なぜい新規顧客開拓はうまく行かないのでしょうか?ここでは小規模・中小企業の新規顧客開拓がうまく行かない代表的な4つの理由をお伝えします。

①「何でもできます!」と言っている

新規顧客開拓がうまく行かない理由の1つ目は、「何でもできます!」と言っている。要するにPRしたい技術や商品・サービスが絞り切れていないケースです。
例えば、A、B、Cの3つテーマが異なる自社商品を取り扱っている中小企業が、新規顧客開拓のため、展示会への出展することに決めました。その際、展示品を検討する時に「せっかく費用をかけて出展するのだからAもBもCも展示したい!」と全ての商品をブースへの来場者にPRしてしまうと、それぞれの製品の訴求力は分散してしまい、来場者の印象にはほとんど残りません。さらにその後の商談や受注にも結び付きづらくなってしまいます。どの新規顧客開拓手法においても、伝えたいテーマ・コンセプトは1つに絞るのが鉄則で、展示会ではPRする商品・サービスは1つに絞り訴求力を高めることが必要になります。

②「どこでもいい」と言っている

新規顧客開拓がうまく行かない2つ目の理由は、「どこでもいいから売りたい!」と言っていて、ターゲット顧客が不明確になっているケースです。例えば新規顧客開拓として、テレアポを実施するときは、見込み客リストの作成が必要ですが、ターゲット顧客が不明確だと確度の高い見込み客リストやトークスクリプトの作成が難しくなります。また、コンテンツSEO対策を実施するときにもターゲット顧客が不明確では、見込み客が検索しそうなキーワード選定が難しく、コンテンツ(記事)の作成もできません。
どの新規顧客開拓手法を実施するときでも、ターゲットの明確化とセグメンテーション(細分化)は必須です。

③新規顧客開拓のPDCAサイクルが回っていない

どの新規顧客開拓手法においても成果に結び付けるには、PDCAサイクルを回し続けることが必須になります。しかし、多くの中小企業はこの新規顧客開拓のPDCAサイクルを回すことが出来ていません。
例えば、

  • 展示会を選定(P)し、出展した(D)のはいいものの、どの程度見込み客を発掘できたのかの確認(C)や改善(A)が出来ていない。
  • 顧客リストとトークスクリプトを作成(P)し、テレアポを実施(D)したが、他の業務が忙しくなり、途中で止めてしまう(CとAは未実施)。

などといったケースです。中小企業がこの新規顧客開拓のPDCAをうまく回せないのには、主に2つの理由があります。

PDCAサイクルを回すことに慣れていない

これは主に労働集約型産業や装置産業の中小企業に共通する傾向です。このような産業は人や設備を増やせば(=PDさえすれば)、確認(C)や改善(A)をほとんどしなくても、売上や生産性が実施直後から右肩上がりで増えていきます。
一方で、新規顧客開拓はどの手法を実施したとしても直ぐに成果には結び付くことはほとんどありません。中には新規顧客開拓を実施してもしばらくは成果が全くと言っていいほど出て来ないケースもあり、PDCAを回し続けることで徐々に成果が出てきます。
そのため、PDさえすれば直ぐに成果が出てくることに慣れている産業の中小企業は、新規顧客開拓においてもP(計画)とD(実行)は実施しても、確認(C)や改善(A)はしようとしません。
(※上述の展示会の例がそれに該当します。)

新規顧客開拓をすべて“自前”でやろうとする

中小企業や小規模事業者は、中堅企業・大手企業に比べると経営資源が少なく、少ない人員で営業を実施していて、社長自ら営業を行っている場合もあります。
そのため、マーケティングの専門部隊や新規顧客開拓専門の人員を配置することは困難で、営業人員は既存顧客の対応をしながら、社長は社長業を行いながら、普段行っている業務と同時進行で新規顧客開拓を実施する必要があります。
このような業務過多の中でも、多くの中小企業や小規模事業者は、「成果が確実に出るか分からないものへの予算を投じるのは難しい」などの理由から、新規顧客開拓をすべて“自前”(社内リソース)で実施しようとします。
しかし、前述の通り新規顧客開拓は直ぐには成果に結びつかないため、成果がしばらく出ないと普段の業務を優先しがちになり、いつの間にか新規顧客開拓をやらなくなってしまいます。
(※上述のテレアポの例が該当します。)

④フォロー営業を怠っている

新規顧客開拓が成功し、問い合わせや面談までたどり着いたとしても、すぐに見積依頼や受注に結び付くとは限りません。
例えば、展示会に出展して100名の名刺が集まったとしても、展示会で見た製品・サービスを今すぐ欲しいという来場者、言わば「今すぐ客」は、100名のうち1~3名程度がいいところ(中にはゼロの場合もあります)、残りの20~30名は今すぐは要らないけどそのうち欲しくなる可能性がある「そのうち客」、残りの半数以上は残念ながら「ニーズなし顧客」という割合です。
この「今すぐ客」「見込み客」「ニーズなし客」の割合は多少増減しますが、展示会に限らず、テレアポやWebマーケティングなど、どの新規顧客開拓でも共通の割合です。そのため、新規顧客開拓でより大きな成果に結び付けるには、「今すぐ客」に加えて「そのうち客」に対するフォロー営業が必須になります。しかし、多くの中小企業は見込み客に対するフォロー営業を怠っている場合が多いのが実情です。中には、そのうち客のリスト化すらできていません。そうすると新規顧客開拓の効果は限定的になってしまいます。

4.新規顧客開拓を成果に結び付けるポイント

新規顧客開拓がうまく行っていない小規模事業者・中小企業が、どのようにしたら新規顧客開拓を成果に結び付けることができるのでしょうか。上述の新規顧客開拓がうまく行かない理由と照らし合わせながらお伝えします。

①実務で活用できるレベルのSWOT分析を実践する

「どこでもいい」「なんでもできます」からの回避のために最も有効なのは、自社の強みやニーズを確認する“実務で活用できるレベル“のSWOT分析の実施です。
例えば、S(自社の強み)を確認するときは、自社の良い点だけでなく、「顧客から選ばれている理由」を中心に確認する必要があります。このように話すと「うちの会社には強みなんてない」と思うかもしれませんが、どの会社も既存のお客様から選ばれている訳ですから、強みは必ずあります。社内ではその強みが当たり前になっていて強みとして把握が出来てないだけで、しっかり調査をすると強みは必ず出てきます。
また、O(機会)のターゲット顧客(市場)については、仮説でもいいのでまずは特定することが必要です。例えば、自動車業界向けの手のひらサイズの金属部品加工を行っている中小企業が、ターゲット顧客(市場)を検討する際、その手のひらサイズの金属部品はどの市場でニーズがありそうか?そのターゲット顧客の困りごとが何か?自社の強みで解決できそうか?どのような競合他社がいそうか?などをできる限り調査します。

以下にSWOT分析の各要素の洗い出し方法をいくつか紹介します。

アンケート調査

1つ目はアンケート調査です。強み(S)と弱み(W)(強化すべき点)を洗い出すのに特に有効です。アンケート調査のポイントはアンケートの項目は選択式ではなく記述式にすること。項目を選択式にしてしまうと回答者は限られた項目の中から回答することになるため、自社が普段気付いていない強み(選ばれている理由)や弱み(強化すべき点)が出てこなくなるためです。

  • 強みの確認
    …「数ある仕入先の中で当社にご発注いただいてる理由を教えて下さい。」
  • 弱みの確認
    …「今後、当社がどのような点を改善・解消すればさらに御社との取引の幅が広がるでしょうか?」

などとアンケート項目は回答者が記述しやすい文章にします。

Webサイト(自社サイト)の分析

自社サイトの分析も現状把握には効果的です。特にGoogle Search Consoleというツールでは、自社サイトがどのようなキーワードで検索され、閲覧されているかを確認できます。また、Googleアナリティクスというツールでは、各ページの閲覧者数、閲覧回数、滞在時間や、閲覧者がどのページを見て問い合わせをしているのかなど、様々な分析を行うことができます。例えば、複数回検索されているキーワードがあり、そのキーワードがきっかけで問い合わせに結び付いていることが確認できたら、そのキーワードは自社の強みに何かしら関連がある可能性があります。

展示会への来場

特にO(機会)である想定したターゲット市場(業界)の傾向や、T(脅威)であるその市場での競合調査などに効果的です。
現在、日本国内で行われる展示会の開催数は年間で約1,000回と言われており、「産業機械・機器全般」、「計測・分析・検査・試験機器」、「電気・電子・通信・半導体」、「環境・エネルギー」「食品・飲料・厨房関連等」「DX化」「農業」等、様々な市場や業界向けに開催されています。
そのため、新規顧客開拓の狙いたいターゲット市場(業界)の展示会が開催されていれば、展示会に訪問し、基調講演を聞き業界のトレンドを確認したり、ブース出展している競合他社の調査などをすると効果的です。

②「手間をかける」箇所と「費用をかける」箇所を明確にする

強みとターゲット顧客(市場)を明確にしたあとは、新規顧客開拓を開始しますが、成果に繋げるためには、PDCAサイクルを回し続ける必要があります。しかし、兼務が多い中小企業の経営者や営業パーソンが新規顧客開拓の工程をすべて自前で行うのは限界があるため、社内リソースで対応するのが難しい工程に関しては外部資源を有効活用します。例えば、テレアポであれば、法人リストの作成やテレアポそのものの代行、コンテンツSEOであれば記事の作成などです。最近はさまざまな代行業者やインターネットサービスが普及しています。特に手間がかかる工程は、費用対効果を検討し有効に活用すると良いでしょう。

以下に新規顧客開拓手法の代行業者・インターネットサービスの例を紹介します。

  • 営業電話代行サービス 
  • 法人リスト作成サービス
  • メール配信サービス 
  • ハガキ・封書DM 郵送サービス
  • FAXDM 送信サービス 
  • オートコールサービス
  • リスティング広告運用業者
  • オウンドメディア運用サービス
  • コンテンツSEO 作成代行

外部業者を活用するときの留意点は、業務を丸投げせず“重要な意思決定は自ら行う” ことです。外部業者の提案内容や報告書などはしっかり確認し、改善(C)や次の計画(P)の内容については外部業者からの提案などを聞き入れつつも、最終的な意思決定は社内の責任者が行います。

③フォロー営業を定期的に実践する

最後のポイントはフォロー営業を定期的に実施することです。なぜならば、新規顧客開拓をより大きな成果に結び付けるには、数%しかいない「今すぐ客」だけにアプローチするのではなく、一定数いる「そのうち客」へのフォロー営業をすることが必要だからです。見込み客リストを作成し、商品・サービスが必要になったタイミングで自社を思い出してもらうため、「そのうち客」に定期的にフォロー営業を行います。
フォロー営業の手法には直接訪問や電話、メール、DM配信など様々な種類がありますが、経営資源に限りのある中小企業は費用対効果(手間対効果)を考慮の上、手法を検討する必要があります。
見込み客が多い場合は、MAツールやメルマガ配信サービスの導入なども有効な可能性があります。

5.新規顧客開拓はPDCAサイクルを回せば必ず成果につながる

今回の記事では、中小企業の新規顧客開拓がうまく行かない理由と、新規顧客開拓を成果に結び付けるポイントについてお伝えしました。
どの新規顧客開拓手法にも共通して言えることは、現状分析を行い、新規顧客開拓のPDCAサイクルを回し続けることができれば、必ず成果に結び付けられるということです。今回の記事を参考に、ぜひ皆さまの新規顧客開拓を成功に繋げてください。

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